社説:従軍慰安婦問題 文大統領発言は無責任 – 秋田魁新報



 旧日本軍の従軍慰安婦問題を巡る2015年の日韓政府間合意について、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は年頭の記者会見で「日本が心から謝罪するなどして、被害者たちが許すことができた時が本当の解決だと考えている」と述べた。元慰安婦を支援するため日本が拠出した10億円の扱いについては凍結し、その扱いを日本政府に改めて協議を求める考えも示した。日韓合意を根底から揺るがす発言であり、韓国トップとして極めて無責任と言わざるを得ない。

 この問題を巡って、日本側は「韓国に5億ドルの経済支援を行うことで両国及び国民の間での請求権を完全かつ最終的に解決した」とする1965年の日韓請求権協定で決着済みとの立場を貫いてきた。だが韓国側は日本政府の責任を追及。93年、当時の河野洋平官房長官が政府の調査結果として談話を発表し、軍の関与を認めて「おわび」を表明。その後もたびたびこの問題が再燃した。そうした中、冷え込んだ関係の改善に向け、朴槿恵(パククネ)政権時代の2015年12月、日韓で「最終的かつ不可逆的な解決」を確認する合意が結ばれた。

 合意では安倍政権も、歴史認識で韓国側に大きく譲歩。それまであいまいだった日本政府の責任と軍の関与を認めるとともに、安倍晋三首相が「心からのおわびと反省」を表明するとした。その代わり、今後この問題を両国で蒸し返さないことを明確にしている。日本政府の10億円拠出も盛り込まれた。

 だが、韓国政府は今回、「日韓合意では問題解決できない」との考えを表明した。日韓の「最終的かつ不可逆的な解決」がほごにされたことは明らかだ。

 文大統領が改めて「日本に心からの謝罪」を求めたことも、日韓合意の趣旨に反するものだ。安倍首相は合意に当たって「戦争に関わりのない世代に、謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」と語っており、日韓合意で「謝罪に区切りをつけたい」との思いが強かった。そんな日本側の願いも裏切られた。日本政府が猛烈に抗議するのは当然だ。

 文大統領が「合意は公式のもので否定はできず、日本に再交渉を求めない」とした点も疑問だ。日本の反発をかわそうとしているのだろうが、その発言だけでは日本側の理解は到底得られないだろう。韓国は日韓合意を履行すべきであり、国際的ルールを逸脱していることを認識しなければならない。日本政府にしっかりと説明し、理解を得られるような対応をすることが求められる。

 一方の日本政府も教訓とすべき点はあるだろう。結果を急ぎ過ぎなかったか。交渉に不手際はなかったか。いま一度見詰め直し、今後の外交に生かしていく必要がある。韓国に対しては感情的にならず、冷え込んだ関係が一層悪化しないよう粘り強く対応してもらいたい。



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