シェアサイクルの成長と、その現状・課題 – INTERNET Watch



中国でインターネットサービスや利用端末、通信環境などが“独自”の発展を遂げています。日本より先行しているとも言える中国のインターネット事情について、そうしたサービスがなぜ普及したのか、その背景を紹介するとともに、普及によって発生した問題や将来の予測などについて書いていきます。

 連載初回となる今回は、日本にも進出した「Mobike」や「ofo」などで知られる中国のシェアサイクルについてあらためて紹介し、再検証していく。「数字データから見るシェアサイクルの成長」「現場で利用者として見るシェアサイクル」「シェアサイクルの問題とその対処」という3点で考察する。中国でもシェアサイクルは、乗り捨て型とポート駐輪型があり、Mobikeやofoは後者にあたり、これについて考える。

数字から見るシェアサイクルの現状

 電子決済の「支付宝(Alipay)」「微信支付(WeChatPay)」であらかじめ乗車料金をチャージした上でアプリを起動し、車両のQRコードを読み取ると車両のロックが解除(ofoの古い車種では4桁のナンバーロックを入力すると解除)され、乗車できる。降車したらロックをかければサービスが終了する。

 中国でシェアサイクルが普及し始めたのは2016年のこと。1年もたたずに、多くの都市でより多くの車両を見るようになった。中国ではサービスローンチ時にお金をばらまくことがよくあるが、シェアサイクルに関してはそれはなく、車両や利用者をよく見るようになったから我も我もと利用するようになったと感じる。

 2016年から普及が開始したシェアサイクルは、2017年7月までに70社により累計1600万台が投入された。多くのサービスで車両代程度のデポジットを入金した上で、30分1元(約17円)ないしはそれ以下の金額で利用できる。また、100円程度で1カ月使い放題のプランが用意されている。こんな値段で儲かるのかと思うのだが、ofoが4月に開催した報道関係者向け発表会では、1日につき1000万元(約1億7000万円)近い売上があると発表している。

「支付宝」か「微信支付」で電子決済し、利用料を多めにチャージする

1元で1カ月使い放題キャンペーン(ofo)

 多くの都市において、9割以上のシェアサイクルがofoとMobikeだ。両者の投入台数について2016年までの数字が出ている。それによると、2社の2016年までの投入台数の合計は、北京市(人口2419万人)では30万台で人口比の浸透率は1.5%、上海(2172万人)では20万台で0.9%、広州(1404万人)では35万台で1.4%、深セン(1137万人)では18万台で2.8%となっている。

 ここで補足すると、深センを除いて市域は市街地より広いので、市街地に置かれたシェアサイクルを利用した人の割合はもう少し高い。市の中心のエリアでは多く車両が投入されていて、駐輪車両や走行車両を嫌が上でも見ることになる。中国に行くと誰もが目にするシェアサイクルの投入台数は人口の2、3%程度なのだ。

 車両は自社生産のほか、「富士康(フォックスコン)」や自転車メーカー「天津富士達(BATTLE)」をはじめとしたEMSによる生産も行っている。これにより、2017年の自転車車両生産台数は、Mobikeは1560万台、ofoは1780万台としている。これは、前述の4都市に限らず中国全土で展開する100を超える都市向けに加え、海外展開も含めた数字だろう。

新車が続々と開発されリリースされる

 2017年年初まとめられた今後のシェアサイクルのニーズとしては、北京では54万台、上海では60万台、広州では35万台、深センでは32万台とされていた。しかし2017年秋口には、北京、上海、広州、深センの4都市に加え、武漢など計11都市で各市の交通当局からの指導が入り、シェアサイクルの新規投入を止めている。

 中国の調査会社「iiMedia」のレポートによれば、省都クラスの大都市はすでに飽和状態となっているという。今後は省の第2・第3の都市クラスの地方都市で車両が投入され、競争が激化していくと予想している。Mobikeとofoないしはそれ以外のうちどれが使われているかというと、中国全体でいえばofoのほうが多く、ofoが53.9%、Mobikeが34.0%、それ以外が12.1%となっている。また、シェアサイクルの投入車両台数について7割が「とても多い」ないしは「多い」と回答している。

 利用者は2016年に2800万人だったのが、2017年には2億人を超える。たった1年間で10倍近く増えたとも言えるし、逆に中国の街でこれだけ目立つのにまだ2億人しか利用していないとも言える。また、今後には、2018年には3億人弱、2019年には3億人台後半と、緩やかな伸びになるだろうと予想している。

中国の現場で見るシェアサイクル

 1都市に多くて数十万台が投入されていて、かつ基本的に乗り捨てできるため、街の中心では大量のシェアサイクル車両が放置されている。市全体で人口比で1~3%だから、繁華街では数えきれないほど大量のシェアサイクルが放置されている。アプリを開くと地図上に多数の自転車車両が置かれているのが確認できるが、繁華街や主要道路沿いであれば確認するまでもなく、周囲を見渡せばどこかにあるというほど普及している。

都市により投入車両数、車両密度はさまざま(ofo、広州)

都市により投入車両数、車両密度はさまざま(Mobike、貴陽)

 シェアサイクルが普及した1年で、路上を走る2輪車は、電動自転車とシェアサイクルばかりになり、私有の自転車が激減した。それにより有料の自転車駐輪場がほとんど消え、また、街の多くの自転車屋が閉まり、残る自転車屋はクロスバイクなどハイエンドの製品を売る店ばかりとなった。

 ただし、普及していない街もある。日本の長崎ないしはそれ以上の坂だらけの重慶市をはじめ、貴陽市や大連市など起伏がある街では普及していない。自転車を漕ぐのは厳しいという体力的問題、自転車の機能的問題だけではない。自転車が走れる平坦な大都市は、大通りの自転車専用道路がもともと整備されている。専用レーンがちゃんと整備されているのだ。自転車走行を考えない坂の街では、自転車レーンがないだけでなく、十字路で横断歩道の代わりに地下道になっているパターンを散見する。自転車は十字路を渡る際、車の脇を走らなければならないので、安全な走行ができない。こうした街では今後、電動アシスト自転車が出てきても事故防止のため、地元の市政府レベルでは普及に消極的になりそうだ。

 また、中国ネット大手の「阿里巴巴(Alibaba)」のお膝元の杭州市では、中国の一部都市でしか展開していない支付宝系のシェアサイクルをよく見かける。企業城下町では、競合会社のサービスが入りにくいというのもある。

坂の街重慶ではシェアサイクルではなくバイクばかり

貴陽は坂が多く自転車道が整備されていない

杭州で多く見かける「HelloBike」

 さて、多くの都市街においては続々と改善された車両が投入されることから、路上にはMobikeやOfoをはじめとしたさまざまな世代の車両が放置されている。ただし、投入には都市ごとに差はあり、競争の激しい大都市から新しい車両が投入される。言い換えれば地方都市には世代の古い車両だけが投入されているケースがある。その結果、例えばMobikeでは、30分1元のMobikeに加え、30分0.5元の「Mobike lite」が大都市のみで登場している。

 使う側の心理としては、Mobikeもofoも両方使えるようにアプリを用意し、利用料金をチャージしたくなる。多くの都市で両社ともサービスをローンチしているし、どちらの車両もすぐ見つかるので、片方が利用できないときのためというのはある。加えて誰かと移動する際もう1人が全くアプリを入れていないときに、2人とも自転車で移動するために2つのアプリを用意したくなる。1アカウントで同時に1台しか利用できないため、2つのアプリを入れておきたいのだ。

 シェアは数字上出ているが、Mobikeが先に入った都市ではMobikeが強く、ofoが先に入った都市ではofoが強いように見える。これは最初に利用したアプリを使い続けようとする利用者が多いからであろう。

シェアサイクル普及に伴う問題とその対処は?

 一気に普及するシェアサイクルに対し、役所の対応はどうなのか。2017年8月、つまり街中シェアサイクルだらけの段階で、中国政府の交通部門がシェアサイクルに関する方針を発表している。それによると、事故防止のため「12歳以下の乗車は禁止」「電動自転車は奨励しない」となっているほか、「ネットの信用スコアを使ったデポジットの無料化を推奨」「合理的な車両の投入」「駐輪場の設置。電子柵を推奨」「実名登録」を挙げている。最後の実名登録は中国のお国柄もあるが、それ以外については参考にすべきところだろう。

子どもの乗車は禁止ではあるが、親の許可のもと乗る子ども(ofo、昆明)

今年60社以上の中小シェアサイクルがなくなり、10億元(約170億円)の利用者のデポジットが消えたという

 シェアサイクルの駐輪場のために電子柵を用いたというニュースもあるので、導入した地域もあるにはある。しかしその多くは、ペンキで駐輪エリアが描かれているケースがほとんどで、駐輪エリアが描かれてさえいない地域もある。また、電動自転車は奨励していないとも言っているので、大きな政府の中国で、電動自転車の急激な増加は考えづらい。

駐輪線もなく放置される車両(杭州)

 また、地方政府つまり役所レベルでルール作りしているところもある。役所側の判断による車両投入規制がその1つだ。また、例えば北京市では、「新たに建設されるバスターミナルや住宅地などでは専用駐輪場を設ける」「消防用エリアや盲人用道路での注射を禁止」「貸し手は不良行為を行う借り手の行動記録を残す」「GPSなどを車両に必ず入れる」「車両は3年毎に更新するか廃棄する」といったことが挙げられている。

 シェアサイクルで発生している問題では、ポイ捨てや故意の破壊などが挙げられる。よくありがちな話としては、ストレスのはけ口であったり、ライバル業者による嫌がらせだったりする。これは中国に限らず、Mobikeやofoの進出先の国々でも起きている。

 車両の故障への対策としては、アプリの乗車前では、故障車のQRコードを車体から読み取ると「これは故障しています」と出て、周辺の別の車両を勧められ、アプリの乗車後では乗車しておかしなところを申告できる(ofo)という対策がとられている。また、家に持ち帰って私有化したり、使いづらいところに長く放置される問題があるが、Mobikeでは乗ると10~30円程度の利用料金がもらえるようになっている。車両自身が故障と判断でき、回収される仕組みがあるが、その故障判断をかいくぐるような独創的な壊され方をされ、未回収となっている車両もまた日々遭遇している。センサー類をそろえても完璧な対策はとれないようだ。

ポチ袋アイコン(紅包)は、長く使われていない懸賞付き車両(Mobike、武漢)

 故障車両を回収し、修理を行う様子も日常的に見かける。あくまで筆者の中国拠点の近所でだが、建設が止まっているコンクリートむき出しの建物の中にofoの故障車が大量に運ばれていて、修理される拠点となっていた。また、人力での対応といえば、道にバラバラに駐輪される車両の対策もある。スタッフがまめに車両を整理整頓に勤めているのだ。ポートのないシェアサイクルにより、多くの人力が使われているわけだ。

ofoの修理スポットらしい(昆明)

専用スタッフが整頓する(ofo、昆明)

 また、多くのシェアサイクルサービスがアプリ側でQRコードを読み込んでの自動解錠となっているが、ofoはアプリで解錠番号が表示され、車両のボタンを押したりナンバーチェーンを回したりするかたちとなっている(最近の車両ではボタンは廃止された)。各車両ごとの解錠番号は変わらないため、アプリを介さずに覚えた解錠番号やナンバーチェーンの端の桁だけ回して解錠を行うことや、ボタンを適当に押していたら解錠されるという不正行為が常態化している。多くの人に使われるシェアサービスについては、物理的なボタンで利用できるようにする場合、不正利用をされる可能性があることを示唆している。

ofoの車両は、生産された時期によってロックの仕組みが異なる

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