質の向上を目指す中国の製造業、お手本は日本? – WEDGE Infinity



中国メディアは何を報じているか

2017年12月8日

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山口亮子 (やまぐち・りょうこ)

ジャーナリスト

2013年北京大学大学院修了、時事通信社を経て16年よりフリージャーナリストとして活動。

[執筆記事]

 中国でここ2年、よく耳にするようになった言葉に「工匠精神(匠の精神)」がある。これは、経済成長の質的な転換を図るためのキーワードの一つ。日本に学ぶという側面も強い。日本の畳職人の作業風景を映した動画が120万回再生されるなど、もともとあった職人への憧憬と政策的な誘導が相まって、工匠精神への関心が高まっている。


(iStock/LysenkoAlexander)


 「『工匠精神』。この言葉はここ2年間、国内での出現率がかなり高く、どの業界でも工匠精神を学べと叫ばれている。結局、中国のような世界第二の経済国であっても、Made in Chinaに満足しているだけでは、製造業の大国にははるかに遠い距離にあるのだ。製造業のレベルの高低をはかるのに重要なのは量ではなく、精度だ」


単なる大量生産から脱却するためのキーワード


 南方週末は12月1日の「工匠精神は何の役に立つのか」という記事(http://www.infzm.com/content/131237)の冒頭でこう掲げた。続けて、「人口ボーナスを享受すると同時に、低い技術力による加工の教訓を総括し、工匠精神の学習に努め、高性能の製造業を発展させる緊急性と必要性がやってきている」と指摘している。


 こうした論調は今の中国で広くみられるものだ。製造業の質を上げる必要があるのは疑問の余地のないところで、政府によるトップダウンで啓蒙に努めているというのが現状だ。なぜこの言葉がキーワードになったのか、簡単に振り返りたい。


 中国は総人口に占める労働力人口が増加し、経済発展を促す「人口ボーナス」の恩恵を甘受してきた。安い労働資本を競争力に世界の工場になったわけだが、こうした状況はもはや過去のものになりつつある。労働人口と資本の大量投下により高度成長を成し遂げるという旧来型の経済発展から、産業の効率化と高度化を図ることで経済の緩やかな成長を維持するという戦略への切り替えが進んでいる。


 この流れの中で、技術力の高度化、精緻化の必要性が認識されるようになった。そして登場したのが「工匠精神」という言葉だ。この言葉を一躍流行語にしたのは、2016年3月に李克強・国務院総理が行った政府工作(活動)報告だった。「企業が個性に合わせたオーダーメイドとフレキシブルな生産を推し進め、倦まずたゆまず向上しようとする工匠精神をはぐくみ、種類を増やし、品質を上げ、ブランドを作るのを励ます」という方針を打ち出したのだ。以来、工匠精神は製造業の分野での流行語になった。


 その意味は文字通り、何か一つの分野を極めること。中国人にとってはスイスの時計、ドイツの自動車、日本の職人技などがパッと思いつく例のようだ。製造業をアップグレードするための官製の流行語だが、なぜこの時期に急に使われるようになったのか。


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