南シナ海問題 – 宮崎日日新聞



◆法の支配の原則を尊重せよ◆

 東南アジア諸国連合(ASEAN)と日米中などの一連の首脳会議がフィリピンで開かれた。近年、南シナ海の軍事拠点化を進める中国の動きを巡って激しい応酬が交わされる場になっていたが、今年は一変。南シナ海問題の議論を避ける各国の姿勢が目立った。だが、問題が片付いたわけではない。中国がASEANと共に問題解決へ向け、法的拘束力のある行動規範作りを急ぐよう求めたい。

議論避ける首脳会議

 中国は、南シナ海で大規模な埋め立てを進め、人工島に滑走路や港湾施設を建設。昨年7月、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所は、南シナ海で中国が主張する幅広い主権について「法的根拠がない」との判断を示したが、中国は受け入れを拒否している。

 そうした問題の構図が変わらないのに、今回の会議で南シナ海が焦点にならなかったのは、中国が今年のASEAN議長国フィリピンなど周辺国を経済支援で懐柔した上、日米もそれぞれの事情から中国に歩み寄った結果だ。フィリピンはアキノ前政権時代に南シナ海問題で中国と激しく争ったが、昨年の政権交代で親中路線に転換。中国は昨年10月に訪中したドゥテルテ大統領に巨額の経済支援を与え、代わりに南シナ海問題を棚上げする合意を引き出した。

 ASEAN首脳会議は南シナ海問題について2014年以降、声明で「懸念」を繰り返し表明。だが、今回は「懸念」の文言が消え、さらに「中国との関係改善に留意」という表現を盛り込んだ。

 トランプ米大統領は、今回の初のアジア歴訪で「米国第一」を貫き、経済的な利益重視を鮮明にした。米ASEAN首脳会議では、米本土に到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発を進める北朝鮮に各国が圧力をかけるよう求める発言を連発したが、南シナ海には触れなかったという。

動きだした規範作成

 安倍晋三首相は、日中韓とASEANの首脳会議で中国の李克強首相と同席した際、日中韓首脳会談の日本開催実現を目指す日本政府の方針を優先し、南シナ海に言及しなかったという。

 中国ASEAN首脳会議では、南シナ海の領有権問題解決に向けた行動規範の条文作成協議の開始が宣言された。法的拘束力を持つ実効性のある条文を作成できるか、が焦点になる。ASEANのレ・ルオン・ミン事務局長は「(行動規範が)効果的であるためには、すべての当事者が拘束される法的拘束力がなければならない」と強調。中国とASEANの行動規範作りが時間稼ぎの手段となったり、実態を隠す形式的な作業になったりしないか注視したい。

 領有権問題に冷静に対処することは必要だ。むやみに民族意識をあおるなど扱いを誤れば解決が一層困難になる恐れがある。法の支配の原則に基づく海洋秩序は、平和と繁栄の前提であり、その原則をおろそかにしてはならない。



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