「朴槿恵事件」の余波 韓国で強まるスポーツ推薦への風当たり – ゴルフダイジェスト・オンライン



超学歴社会の韓国。著名なアスリートも、私立の名門大学出身であるケースが散見される。フィギュアスケートでバンクーバー五輪金メダリストのキム・ヨナさん、日本でも活躍したサッカー元同国代表監督の洪明甫(ホン・ミョンボ)氏らは早稲田大の姉妹校とされる高麗(コリョ)大を卒業した。

プロゴルファーも例外ではない。高麗大は世界ランク5位のチョン・インジノ・スンヨルホ・インヘらを輩出。元世界ランク1位の申ジエキム・キョンテらはライバルの延世(ヨンセ)大出身だ。日本でも人気のイ・ボミキム・ハヌルアン・シネは建国(コングク)大に通った。

こうした選手らは「体育特技生」と呼ばれ、スポーツ推薦での入学が多い。韓国では裏口入学や不正な単位取得などが以前から問題視されてきたが、ここに来てスポーツ推薦の学生への風当たりが強まっているというのだ。背景には韓国全土を揺るがした朴槿恵(パク・クネ)前大統領をめぐる一連の事件がある。

なぜ名門大学に進学するのか?

そもそもプロスポーツの世界では、トップレベルになれば数億円単位の資産を得られる。名門大への進学とスポーツ選手としての成功は必ずしもリンクしないように思えるが、なぜ韓国人の若きスポーツエリートたちは進学するのだろうか。

大学側から見れば、スポーツ選手の活躍で学校の知名度を高める狙いがある。一方、長年日本で韓国人選手の通訳やマネジメントを担う韓国人男性は「セカンドキャリアを考えたときに名門大学に行くことが極めて重要になる」と指摘する。

「日本と比較して韓国では、スポーツの実績だけでその後のキャリアを進めていくことは難しい。実際どうなのか定かではないけど、選手たちはそう感じている。一生分の財産を稼げたとしても、その後の人生で生きがいが必要になる。大学に進むのは、そのためです」。

ただ、一般の入試に通ったほかの学生のように、毎日大学に通うわけではない。日本ツアー1勝で現在は韓国人選手のマネジメントなどを行う金愛淑(キム・エイスク)さんは「職業柄ではありますが、スポーツ推薦で入学したプロゴルファーは、ほとんど大学に通えていなかった。米国ツアーに出場したり、日本で活躍したりと世界中を転戦します。もちろん選手によるけど、帰国したら大学に行く程度で、基本的には通信教育やレポートで単位を取得している」と実情を明かす。

明るみに出た不正

2016年11月に発覚したのが、朴前大統領の親友だった実業家・崔順実(チェ・スンシル)被告の娘の不正入学疑惑だった。名門・梨花(イファ)女子大の14年の推薦入試で崔被告が大学関係者に働きかけ、馬術の韓国代表だった娘を不正に合格させていたことが明るみに出た。(崔被告はその後逮捕され、懲役3年の実刑判決を受けた)

過酷な“お受験戦争”で知られる韓国社会で、この“裏口入学”に不満は爆発。各地で学生らの抗議デモが行われた。

金さんは「この騒動で、韓国人選手が大学でより勉強をしなくてはならない状況に変わった。スポーツ推薦で入学した学生に対しての風当たりがすごく強くなった」と証言する。「プロゴルファーの話ではないですが、教授にレポートをやってもらっていたなんてことも明るみに出た」といい、スポーツ推薦組に対する不公平感が広がっていった。

「大学によって、単位を簡単に出さなくなっていくみたいです」(金さん)。前出の韓国人男性は「確実に(大学側は)厳しくなっている」とし、韓国ツアーを主戦場とする若手の中には大学の勉強についていけず、留年や自主退学を選択した選手もいると明かした。

韓国政府の対応は?

朝鮮日報によると、昨年12月に同国の教育部(省に相当)は、各大学におけるスポーツ推薦入試の実態を調査し、疑わしい場合は大学に直接改善を促すことを決定した。男性は「どこまで(政府が)介入して、どう調査をしているかはわからない」としながら、「韓国の風潮に変化があり、スポーツ選手に影響があるのは確か。日本の『文武両道』という言葉は韓国では馴染みが薄かったけど、例えば、日本の高校野球は夏休みと春休みに甲子園大会がある。でも韓国は平日に全国大会をやることが普通だった。こういうものは見直した方が良いとなっている」と明かした。

男性は「良し悪しは、非常に難しい。でもスポーツをやってきた人のすべてがプロで成功するわけではなく、仮に高校生の時点でプロを断念した人は、大学にも進学できずに、それ(スポーツ)しかやってこなかったことになる。セーフティネットのようなものは考えるべき」と続けたが、勉学の縛りをつけると優秀なスポーツ選手が育ちにくくなるという側面も懸念した。(編集部・林洋平)

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